好きな人の庭を想像する
暖かくいい匂いがして春の風が吹いている
猫を想像する
ふかふかしていて毛並みの整った良い猫だ
暖かい手で撫でられる
猫はこの世の幸せはここにしかないような気分になる
それだけで他は何もいらないと思える
それが幸せなのだきっと
確かな幸せの形
私は触れたことがあるのか
ただいつかのミニシアターで私は
必死の形相でスクリーンを眺めながら
スクリーンの中に何かを見出そうとする意思の塊でしかなかった馬鹿な時代
少なくとも上映中は私は幸せだった
張り裂けるような幸せだった
17歳だった
正直私はこれからの幸せが、これ以上の幸せが思い描けない
私の人生はここで停止する
自分ではどうしようもないのだ
勝手に停止するのだから
停止停止停止停止
私は今これ以上のことを考えられないように出来ている
本当に考えられないのだ何も何一つ
何も
貴方の膝の上で寝ること以外は何も
それが叶えられることはない、一生
心の中で美しい物語を作るのだ
その物語がこれからの私の人生なのだ
それはとても危険なことだ
そんなことは分かっているさ
でも今はそうするしかない